学長:横浜国大キャンパスの代名詞とも言える豊かな森は、故?宮脇昭名誉教授の代表的なお仕事のひとつと言われます。本日は、宮脇先生の系譜を継ぐ生態学者でらっしゃる小池先生に、宮脇先生の手掛けられた植生について伺えればと思います。
小池:まず、この森のすごさについてお話ししますと、人工とは思えないほど植生が多様です。新たに大規模な植栽をするとなったら、普通は特定の種類をきれいに植えていきます。並木を作ったり、区画を決めたりして、見た目のバランスが良くなるようにする、と。しかし、そうするとどうしても自然の森のような複雑なテクスチャーは生まれません。
学長:本学の森は、「もともと森だった場所を拓いてキャンパスをつくった」と思われるほどに自然の森に近い。宮脇先生がそうした植生を実現できたのはなぜでしょう。
小池:宮脇先生は生態学者として、日本各地の植生についてのカタログ(目録)をつくってきました。「こういう場所には、こういう種類の植物が生える」という情報を整理してらしたわけです。その経験から、ある程度その環境に合う植物を絞り込んだ上で、とにかくいろいろな種類を密植させることが大事だと考えたのですね。すると環境に合った種が生き延びますし、それらが複雑に絡み合い、自然の森に近い姿になっていきます。